Abstract：健常若年者30名を対象に、小型3軸加速度計を用いてTimed Up and Go Test(以下、TUG)と歩行時における体重心の加速度変化を計測し、動作時の円滑性を検討した。計測した3軸加速度波形から平均情報量を算出した。結果、平均情報量において快適速度でのTUGと最大速度でのTUGの間に有意差は認められなかった。歩行動作に比べ、TUGは非周期的な動作要素を含むことの影響を受けたため、個人内において動作速度の違いによる動作の円滑性に違いが認められないことが考えられた。また、健常若年者における最大速度でのTUGにおいて、快適速度での歩行および最大速度での歩行と同様に、動作時間と平均情報量との間に有意な負の相関が認められ、動作時間が短い者ほど動作の円滑性が損なわれるという特徴が認められた。歩行速度を速くすることで動作の調整がより多く必要となることに加え、歩行以外の運動要素も速く行うことで、平均情報量が大きくなったと推察された。よって、健常若年者においてTUGが示す動的バランス能力は、動作自体の円滑性を必ずしも表していないことが示唆された。(著者抄録)

Abstract：背景:脳内出血の予後に対する性差は女性が男性よりも悪いという報告が多いものの、まだ議論が続いている。我々は1986年1月から2000年12月迄の15年間に、地域の中核病院であるK病院神経内科に入院した特発性脳内出血(ICH)患者786名を対象に、死亡率、退院時の歩行移動機能に性差や年齢差がみられるか検討した。方法:ロジスティック回帰分析を用いて患者の年齢、性別の交絡を調整して、性別と年齢との関連、性別・年齢と入院中の死亡、退院時の歩行移動機能との関連を検討した。解析に当っては対象患者をテント上出血とテント下出血とに分けて分析した。結果:死亡率(調整死亡オッズ)は、テント上出血で年齢が高いほど、女性よりも男性で有意に高かった。テント下出血では性別、年齢ともに死亡との有意な関連を認めなかった。退院時の自立歩行能力は、テント上出血で年齢が高いほど有意に低下したが、性別とは有意な関連を認めなかった。テント下出血では、性別、年齢ともに有意な関連を認めなかった。結論:テント上出血で、年齢はICHの入院中の死亡と退院時の自立歩行機能の両者で危険因子と考えられた。また、男性であることは入院中の死亡の危険因子と考えられたが、退院時の自立歩行機能については、性差を明確にできなかった。テント下出血では、性別も年齢も、有意な関連を認めなかった。(著者抄録)